みらいへの想い
良い介護をつくるためには、業界全体の成長が欠かせない
20代、起業せざるを得なかった
もともと介護業界に特別な思い入れがあって起業したわけではありません。会社員や個人事業主を経験し、どうしても社会に適合できないような違和感を抱いていました。個人事業主になってからは全く働けないという時期もあり、どちらかといえば起業せざるを得なかったというのが正直なところです。
介護業界で起業したのは、ふたつの理由があります。介護報酬が決まっており、財務が比較的シンプルだったこと。加えて、私がおじいちゃん・おばあちゃん子で、介護現場で働くイメージを持てたこと。とはいえ介護は未経験、起業した時点で経営に関する知識も全くありませんでした。妻と一緒に介護職員初任者研修を受けたり、業界経験者の友人にフォローしてもらったりと、無我夢中でデイサービス運営に勤しんでいました。
介護DXに注力している理由
株式会社グローケアは、北九州市内で3カ所のデイサービスを運営しています。2019年にはRelease株式会社を設立、クラウドサービス「カイホウ」の運営を行っています。
カイホウは介護現場の紙資料をクラウド上で一元管理したり、FAXや郵送などにかかる事務作業を効率化したりと、介護現場の負担軽減を実現します。2023年にケアプランデータ連携システム(居宅介護支援事業者と介護サービス事業者間で発生する書類等を、オンラインでやり取りすることができる共通の情報連携基盤)が本稼働となり、各事業者のデジタル化への取り組みも本格化してくるでしょう。ケアに集中できる環境づくりのために、カイホウは心強いパートナーになれるはずです。
新しい仕組みで介護現場の負担を減らす
私たちが現在力を入れている介護DXの領域ですが、これまで想像以上に苦戦を強いられてきました。介護事業者がコツコツとつくってきた仕組みが、新しいサービス導入の壁になっていたのです。
実際、彼らの創意工夫によって介護サービスは成り立ってきました。しかし従来の仕組みに固執することで、時代の変化に対応できなくなるという側面もあるはず。介護人材の不足という問題に直面する中、介護職の負担を減らすことは喫緊の課題です。介護現場で働く皆さん全員にメリットを感じていただけるように、徹底的にサービスの品質を磨いてきました。国主導のケアプランデータ連携システムの本稼働も追い風となり、ようやく壁を乗り越えつつあると実感します。
破壊と創造を繰り返し、良い介護サービスをつくっていく
介護保険制度は国の事業であり、私たち介護事業者は、国の介護事業のバリエーションを増やす役割を担っているといえるでしょう。他事業者はライバルでなく、良い介護をつくっていく仲間だと私は考えています。
良い介護をつくっていくためには、業界全体の“成長”が欠かせません。個人も法人も、成長が止まると衰退してしまいます。成長しているところは魅力的に映るし、人も集まってきますよね。時代に合わせて良いものをつくるには、破壊と創造を繰り返しながら成長する必要があると思います。
まだまだ私は、経営者として十分な結果を出せたとは思っていません。ただ、私たちが事業を通じて培ってきたノウハウや仕組みは、土台という形でようやく整備されてきました。5〜10年かけて、全国に向けて事業展開を進めていきたいと考えています。また、介護人材不足の解決の一助となる新規事業も形になりつつあります。多くの方の役に立つ事業やサービスを、これからもつくっていきたいですね。
現場に足を運び、チャンスを掴もう
長らく介護業界は、3K(きつい/汚い/危険)だといわれてきました。でも日々進化し、労働環境はかなり改善されています。介護職=低賃金というイメージもありますが、若い世代にとっては決して低くないと私は思います。むしろ国や行政による規制緩和も進んでいて、これほどチャンスに溢れた業界も少ないのではないでしょうか。
例えば福岡県では、極端な話、国家資格がなくとも実務経験を3年積めば、生活相談員としての要件を満たせます。(融資制度の経営者保証外しなども後押しし)短期間で起業へのアドバンテージを得られるので、介護業界に挑戦する若い世代の経営者が誕生することを期待しています。
介護・福祉業界に関心のある方にお勧めしたいのは、現場に足を運ぶことです。福祉の世界は決して“きれいごと”だけでは語れません。現実をきちんと知った上でチャンスを掴んでほしいと思います。
私は学生時代よりも、社会に出たときの方が伸び伸びと人生を歩めています。ぜひ皆さんも、充実した社会人生活を送ってください。